ノルウェーの偉大な劇作家ヘンリック・イプセンの66歳のときの作品
「小さなエイヨルフ」
割と短めの作品です。
イプセンは、「人形の家」で女性の自立を取り上げたり、
社会の悪や自然の驚異など、色々なテーマを描いてきた作家で、
今もシェイクスピアの次に上演されるといわれるくらいの人気作家です。
後期になると、かなりスピリチュアルな姿勢も出てきます。
この「小さなエイヨルフ」では、アルメルスとリータ夫妻の子供エイヨルフが
溺れ死んだことが様々な気づきと変化、新しい価値観の獲得になるのですが、
エイヨルフが死んだのは、彼らが望んでいたからだという記述があります。
子供が死んで、悲嘆に暮れ、夫婦仲も引き裂かれそうになり、
とてつもない喪失感に襲われているのですが、
リータは夫を独占したいという気持ちから、エイヨルフをうとましがり、
アルメルスは、子供が障害をもつ原因になった自分の行いを、なんとか償おうとしています。
確かにエイヨルフの死によって、二人の潜在的な願望は達成されます。
こうした現象は、まさに引き寄せの法則なだけに、
イプセン自身が引き寄せの法則的なことに気づいていないと書けないでしょう。
そして、表題の「捨てること、それが手にすることなんだ」は、
夫アルメルスの最後の方の台詞です。
エイヨルフの死から「意味」を見いだしたとき、
エイヨルフの喪失から新しい人生を見いだすのです。
こうしたことは、神の御技といっていいでしょう。
実際、広大なソースエナジーの視点から、計画されていたりします。
その象徴のように、イプセンは、巨大な自然をよく背景に描きます。
スピリチュアルって、胡散臭いような印象を受けるかもしれませんが、
多くの偉大な作品の中に、スピリチュアリティというのは入っているものなのです。
ですから、普通に深い人生哲学なわけです。